ラベンダーと星空の約束+α

 


 ◇


流星のビデオレターを見終えたのは、二時半を少し過ぎた頃だった。



紫龍をもう一度寝かせつけ様と紫は頑張っていたが、すっかり目が覚めちまったみたいで寝てくれねぇ。



布団の上で枕相手に、ヒーローごっこを始めたチビを見て、紫はとうとう諦めた。



ソファーに座り肩越しに見てる俺と視線が合うと、紫と俺は同時に同じ事を口にした。




「外出るか」
「外行こっか」




枕に必殺技をかましていたチビは

「行くー!」と元気に言い、先に玄関に向けて駆け出した。



いつもなら「三歳児がこんな夜中に…」と反対しそうな紫だが、今夜は特別だからな。



多分紫も俺と同じ気持ちなんだろう。

今日だけは、もう少しあいつを感じていたい…



だから外に行きてぇ気持ちになる。

星の見える外の方が、何となくあいつに近い気がするからな…




玄関を出ると、家の中より涼しい風が吹いて心地好かった。



夜の匂いの風に、夏草とラベンダーの香りが混ざり、サワサワと木々の葉の擦れ合う音が聴こえる。



濃い闇の中に限りなく広がるのは、いつも通りのすげぇ数の星。



チビは俺の肩車でキャッキャとはしゃぎ、バシバシ頭を叩いてくる。



紫が「ちょっと待ってて」と言い残し、店に向かった。

ラベンダー畑のライトを点けに行ったんだ。



ライトアップの時間は、タイマー設定で2時までにしてあるから、この時間は真っ暗だ。

歩き難ぇ。




紫が店に入って数秒後、微かな星明かりしかなかった闇の中に、

ぼんやりと光る、青紫色の花の群れが浮き上がった。



紫を待って、並んでラベンダー畑の方へ歩き出す。



肩の上でチビが、ヘッポコな替え歌を歌い始めた。



「GO!GO!戦隊〜
ラベンダ、ラベンダ、ベランダ、ラベンダーーZ!」




「おい、一回“ベランダ”って言わなかったか?」




「言ってねー大樹バーカ!」




「コラ紫龍!バカとか言わないの!

それに大樹じゃなく、これからは父ちゃんだよ?」




「うん!父ちゃん!分かった!

ねー大樹あれやって?

あんねーグルグルビヨーンて奴やって?」




「全然分かってねぇな…
呼び慣れるには、時間が必要だな…」