「アレって何だ?
何か他に入ってたか…?」
ローテーブルの上に置いといた白い封筒を手に取ると、何か小さな物が中で動いた気配がした。
封筒を傾け、中身を手の平に出す。
「あ…」
「あっ!」
同時に驚く俺達の前に滑り出たのは、シルバーのブレスレットだった。
それには紫の誕生石、ペリドットのアップルグリーン色した小花のモチーフが一つぶら下がっている。
これは高校一年の夏休みに、俺が紫の誕生日プレゼントに贈り、その年の冬に流星が没収したやつだ。
あいつ…
今頃返してくんのかよ……
この封筒にDVDと一緒に入れてたって事は、今付けてやれって事か?
「まぁ、それもいいか…」
と思い、紫の右手首に懐かしいブレスレットを付けてやった。
「結婚指輪とか買わねーぞ。
指輪はそれがあるからな。
俺からは、このちゃっちいブレスレットで十分だろ」
「大樹…この紫水晶の指輪…外せって言わないの?」
「言わねぇ。外すな。
その指輪ごと、お前をもらってやる」
「…うん……」
紫の左手には紫水晶の指輪。
右手にはペリドットのブレスレット。
それでいんじゃねぇの?
こいつは昔から欲張りなんだ。
俺らの愛を独り占めなんて、すげぇ紫らしい。
紫は左手と右手を顔の前に持ってきて、眺めていた。
テレビからの光りを集めて輝く、紫色と黄緑色の光り。
その小さな光りが、嬉しそうに微笑む紫の顔を照らす。
画面の中からそれを見ている流星は、一仕事終えた後の様な安堵の息を吐き出し、安心した面して笑っていた。
『これで最後の心配事は片付いたかな……
正直言うとね、独り身になった紫に、言い寄る男が現れるんじゃないかって、それも心配していたんだ。
それがどんな偉人でも善人でも、俺の知らない奴に紫を委(ユダ)ねるのは嫌だな…
その点大樹なら問題ない。
君の為人(ヒトトナリ)は理解しているし、俺は君の気質が好きだよ』
「何キモイ事い…痛って!
てめぇ、脇腹肘打ちは止めろ!
今のマジで痛かったぞ!」
「折角流星があんたの事褒めてるのに、要らないツッコミするからでしょ?
黙って聞きなさいよバカ!」
「お、おう…」


