『こっちの方が感覚的に分かり易いな……よし。
紫、分かり難くてゴメン。
今度はこれを想像してみて?
こっちはきっと、君に答えをくれる筈』
「うん」
『ストーリー仕立てで行くよ。
俺の死後数年が経過しても、君達は変わらない関係を続けていた。
支え合い、時には喧嘩して、平穏に流れる月日を当たり前の様に過ごしていた。
こんな日々が一生続くと紫は信じて疑わなかった。
ところがある日…大樹に見合いの話しが舞い込んだ。
相手の女性は隣町の同業者の娘。
大樹より3つ年下の、真面目で可愛らしい女性だ。
お互いの両親は乗り気で、見合いの日時が既に決められ、場所も押さえてあった』
ここまで聞くと、流星の魂胆が分かった。
俺の見合い話しに、紫にヤキモチ焼かせようって事だろ?
悪りぃがその作戦はダメだ。
意味がねぇ。
俺が見合いしようが結婚しようが、紫は何とも思わねぇよ。
それどころか…
「へーあんたと結婚してくれる人が居るんだね。
奇跡?ボランティア精神?
とにかく良かったよ。姉としてホッとした。
逃げられない様に、バカな所は隠しなよ?」
返ってくんのは多分、そんな反応だ。
現に紫は微塵も動揺してねぇ。
「ふーん」なんて呑気な相槌を打ちながら、
俺の見合いのストーリーを聞いている。
全く期待してねぇ俺と、動じない紫。
そんな俺達にあいつだけは、前向きな何かを確信して話しを進めていた。
『大樹が見合いをすると聞いても、紫は動揺しなかった。
何故なら見合いをしても、大樹なら絶対に断り、結婚なんてしないと思っていたから。
しかし…現実は君の予想通りには行かなかった』
「…え…?」
『見合い後、その女性ととんとん拍子で話しが纏まり、大樹はすんなり結婚してしまう。
理由は…そうだな、農業の後継者、つまり跡継ぎが欲しい為』
「………」


