そんな筈ねぇだろ。
結婚だぞ?
何も変わらねぇって事は………あるな。
キョトンとした紫のアホ面を見て、俺も想像してみたが、確かに大した変化は無かった。
変わるとすれば、紫とチビの生活拠点が隣の俺ん家になって、名字が「大原」に変わるくらいだ。
紫は店を続けるだろうから、俺ん家の畑はやらねぇ。
そうすると、ファーム月岡と実家で過ごす時間が多くなるな。
ひょっとすると寝泊まりする場所も月岡家で、俺が今まで通りこの家に通う方が、都合がいいかもしんねぇ。
結婚したとしてもほぼ今のまんまだ。
何も変わんねぇな……
変化がないと言う結論が出る事を、流星は分かって質問していやがった。
画面の中であいつが「クスリ」笑う。
『君達が結婚しても、生活の変化は少ないよね?
つまりこう言う事だよ。
君達は既に夫婦の様な存在なんだ。
今までも二人は近しい存在だったけど、俺が居なくなってからは、特に距離が縮まったんじゃない?
大樹は紫を心配して、一番側で支え続けているだろうし、それはこれからも変わらない』
既に夫婦……
まぁ紫とは顔を合わせねぇ日はねぇし、端から見れば、夫婦に見えんのかも知れねぇ。
チビの保育園の迎えに行ったら…
「紫龍君、お父さんのお迎えだよー」
と新顔の先生に勘違いされたし、
農業組合の集まりでも…
「お前らまだ籍入れてなかったのか?さっさと入れろよ。
子供の小学校入学までに入れねぇと、面倒くせぇ事になるぞ?」
なんて言われるし…
確かに夫婦みてぇに見えんのかも知れねぇが…
肝心な所が違ってんだ。
俺と紫の関係に足りねぇ物は『愛情』だ。
俺からはあっても、紫は俺を男として見れねぇ。
俺達の間には、一方通行の愛情しか無ぇんだ。
紫は困った顔して、画面の中の流星を見ていた。
流星の願いを聞いてはやりてぇし、既に夫婦と言われてそんな気もするが、
流星だけを愛してきたこいつの気持ちが、再婚話について行けねぇ…
そんな感じで戸惑ってんだろう。


