『紫、この本何だと思う?』
そう言いながら今読んでいた本をパタンと閉じ、表紙をカメラに向ける。
それはラベンダー畑と星空の写真がプリントされた、見慣れた本。
何だと思うと聞かれた意味が分かんねぇ。
「ラベンダーと星空の約束…」
画面の中の流星にそう答えた紫も、なぜ今更そんな質問をするのかと、首を傾げている。
テレビの中のあいつが可笑しそうに笑った。
『ブブー!残念!
これは君が初めて目にする本だよ。
ほら、良く見て。
ちゃんと映ってるかな?見える?』
「あっ!!」
紫が大きな驚きの声を上げると、ソファーの後ろで寝ているチビが「ん〜」と唸った。
慌てて口を押さえる紫。
起きてしまったのかと俺も後ろを見たが、
紫龍はゴロゴロ転がり、ソファーの後ろをボスッと蹴飛ばしただけで、
またすぴすぴ寝息を立て始めた。
ホッとしてテレビ画面に向かう俺達。
流星が「良く見て」と言ってカメラに近づけたその表紙は、確かに俺達が知っているあの本と違う所があった。
背景の写真は全く同じだが、タイトルが違っている。
『ラベンダーと星空の約束』の前に、それより一回り小さな文字で『紫へ贈る』と付け足されていた。
『紫へ贈る ラベンダーと星空の約束』
『高校一年生の君は、俺にこう言ったのを覚えているかな?
“あの本のラスト書き直してくれない?
あんなラストじゃ、あの女の子は幸せになれないよ”
そう言ったの思い出した?』
「うん…」
『だから書き直した。
ラストだけじゃなく、初めから全てをね。
架空の少年少女じゃなく今度は100%俺と紫の物語。
勿論最後はハッピーエンドだよ。
さて…この本、俺はこれからどこかに隠します。
3年後の君達の時間で言うと、既に隠してある。
さあ、推理してみて。どこだと思う?
ヒントは3年後まで、誰の目にも触れない場所』


