何の本なのか表紙は見えねぇが、ハードカバーの分厚い本だ。
流星は足を組んだ膝の上にそれを乗せ、パラパラとページをめくり、徐(オモムロ)に読み始めた。
こいつ何してんだ…?
話しはもうお終わりか?
話し終えたのに、ビデオを止めんの忘れてんのか?
そうも取れる雰囲気に首を捻ったが、あいつはチラリとこっちを見てニッコリ笑い、また読書に戻ったから違うみてぇだ。
そうか…本なんか読み始めたのは、きっと紫に泣く時間を与える為だな。
画面の中で静かに本を読むあいつ。
その姿を見ながら、紫はまだ泣き続けていた。
けど涙の量が徐々に減ってきたのは、ティッシュの使用量で分かる。
落ち着きを取り戻しつつあんな。
流星が本を黙読すると言う変化のない画面が続くと、次第に波打つ心は静まり、
やがて紫はズビッと鼻をかんで、涙を収める事が出来た。
「泣き止んだか?」
「うん。泣いたの久しぶり…何かスッキリした。
はい大樹、これあげる。」
「あ゙?鼻かんだティッシュなんていらねぇよ。
自分で捨てに行け」
「泣く時は大樹の隣で泣きなって、さっき流星が言ってたじゃない」
「そんな役目の為に隣に居るんじゃねぇよ。
俺はゴミ係でもタオルでもねぇ、アホか」
「それも込みでしょ?
いいから早く捨ててきて。
本読んでるけど、流星がまた話し出すかも知れないし、今私目が離せないから」
「一時停止すればいいだろ」って思ったが、
こんな事で言い争うのも面倒臭くなり、
舌打ちしながら大量のティッシュを掴み、立ち上がった。
いつも思うが、こいつは俺に対して常にひでぇ。
最近は青空よりも、ひでぇ扱いされてる気がする。
違うか…青空はあれだ。
紫がうるせぇ事言い出しそうな雰囲気を察知すると、素早く逃げるからな…
ズリィよなあいつ…
だから俺だけいつも損な役目を引き受ける。
まぁ、慣れてっからいいけどよ。
紫の涙と鼻水のついたティッシュを台所のごみ箱まで捨てに行き、
戻ると、ちょうど流星が手元の本から顔を上げ、再び話し始めた所だった。


