『時刻はもうすぐ、この部屋に夕陽が差し込む頃だよ。
部屋の一角がオレンジ色に染まると、今日も全力で働いてくれた君が帰って来る。
「流星ただいま!」って…笑顔で可愛いキスをくれるんだ…』
これから帰って来る紫を想像してんのか、流星は数秒目を閉じ、嬉しそうな面して頬を緩める。
それからゆっくりと目を開け、茶色の瞳を俺達に向け、一拍置いてから続きを話し出した。
『俺の今の状況はそんな感じだけど、これを見ている3年後の君はどうかな?
君が今、どんな状況で俺を見ているのか、推理して見ようか?
そうだな……季節は夏。
今宵もラベンダーと星空が、幻想的な美しさを闇の中に輝かせている。
時刻は深夜1時過ぎ。
皆が寝静まったリビングには、窓からの涼やかな虫の音と…紫龍の可愛い寝息が聴こえているんだ。
照明を落とした室内には、テレビ画面を通して俺の姿が明るく浮かび上がり…
それを君は向かいのソファーに座り、大樹の隣で少し驚いて見ている。
そんな感じじゃないかな?
どう?当たってる?』
何だこいつ…
不気味な程当たってる。
見られてるみたいで、怖ぇな……
俺は若干びびっていたが、紫はその問い掛けに真剣にコクコク頷いていた。
頷くだけで声は出てこねぇ。
紫は今、込み上げる感情を抑えるのに必死になっている。
久しぶりのあいつの声を聞き、
風に揺れる前髪や手の仕草や、表情の動きの一つ一つに、胸が一杯になってんだろうな。
今にも泣き出しそうな面…
小刻みに震える手…
そんな風に感極まって泣き出しそうになってんのに、あいつにした約束が紫の涙を押し留める。
胸が一杯になりながらも、手と心の震えを鎮めようとして、
俺のTシャツの裾を、一層強く握りしめるだけだ。
その左手をTシャツから引き剥がし、強く握ってやる。
これで少しは震えがマシになったか?
紫程じゃねぇが、俺も少しは緊張していた。
流星が何を言うのかって事もそうだが、一番気になるのは紫の反応だ。
これを受け取った時、あいつは俺にこう言った。
『強く生きている彼女が、これを見て少し肩の力を抜いてくれたら…』
是非そうあって欲しいもんだ。
このDVDに期待してもいいのか…?
紫は……


