ラベンダーと星空の約束+α

 


青い待機状態の画面が切り替わり、画面一杯に白い布地と白いボタンが映った。



流星の着ているワイシャツの腹辺りだろう。

手を伸ばし、録画のスイッチを入れたって所だな。



それが遠退き、腹から衿元の手術跡までが映り、

それから椅子に座って書斎の机に向かう、あいつの顔が見えた。



ビデオカメラは机の上に置いて撮ってんだろうな。



背後には書棚。

何語か分かんねぇタイトルの付いた、分厚い本がぎっしり詰め込まれている。



画面右下に『7.11.17:43』と日付と時刻が入っていた。

それは亡くなる8日前の日付だ。




8日前か…

まるで自分の死ぬ日を予感して撮影したみてぇだ…

そんな事ある筈ねぇがな…




日付と時刻の白い文字は、3秒表示されてからフッと消えた。



「流星…」と隣で紫が呟いた。




突然のビデオレターに紫は驚き、嬉しそうな面して…

でも俺のTシャツの裾を掴む左手は、微かに震えていた。



画面の中のあいつは、背もたれ肘掛け付きの布張りのデスクチェアーに、ゆったりと足を組み座っている。



視線はカメラに。

笑みを浮かべた唇をゆっくり開き、言葉を語り出した。




『紫、久しぶりだね。

別れの日から3年経った今の君も、相変わらず美しくて…見惚れてしまうよ』





こいつは…また恥っずい台詞、吐かしやがって…

3年前のお前に、今の紫の姿は見えてねーだろ。



第一声がそんな言葉で俺は呆れたが、

紫はコイツらしい台詞を聞けて、嬉しいだろうとも思った。





『これを撮影したのは7月11日。

気持ちの良い暑さの続く、観光最盛期。

ほら聞こえるだろ?外からの賑わいが…』





流星は話しながら、顔を右横に向けた。



そっちの方にあるのは、店舗と駐車場が見える北側の窓。

緩い風が時折、流星の前髪を揺すっていた。



その風に乗り、観光客の楽しげな声や車のエンジン音が、小さく聴こえてくる。



窓は画面の外だが、多分全開になってんじゃねぇかな。

音の入り方に、そんな気がした。