真夏の暑い、午後三時過ぎだった。
晴れた空はどこまでも青く、高く飛び立った雲雀(ヒバリ)が縄張りを主張し、甲高く鳴いていた。
辺りにはムワッとする程の濃い夏草の匂いが立ち込め、
その中を爽やかなラベンダー色の風が吹き抜けて行った。
アスファルトはゆらゆらと熱気を漂わせ、溶けたソフトクリームの汁が、駐車場のあちこちに甘ったるいシミを作っていた。
いつもと変わらない長閑(ノドカ)な観光地の夏の午後。
それを引き裂いたのは、流星を跳ね飛ばし、自販機に突っ込んだ車の…
耳をつんざく様な破壊音。
周囲にいた観光客らが、悲鳴を上げた。
形を無くしたプラスチックのゴミ箱から空き缶や空き瓶が飛び出し、
耳障りな音を立て、駐車場に派手に散らばった。
即死だって聞いた。
走ったから心臓が止まったのか、それとも跳ねられた衝撃で止まったのかは知らねぇが…
額から一筋の血を流し、アスファルトに力無く横たわる流星を、紫が腕の中に抱きしめた時には、
あいつの心臓は既に、動くのを止めていたんだ…
色素の薄い茶色の瞳には、もう二度と紫の姿は映らねぇ。
いつもいつも鳥肌もんの台詞ばっか吐いてたその口も、
この先二度と恥ずい言葉が言えねぇし、星空も語らねぇ。
それでも紫は、あいつの最後の言葉を聴いたって今も言い張る。
『…信じてるから…俺がいなくなっても…君なら大丈夫だと……
…幸せをありがとう……
紫…これから先も…ずっと…愛してる……』
周囲に集まって来た観光客にも、店や畑から駆け付けた紫の家族にも、その言葉は聴こえてねぇ。
皆、即死だったと言ってたんだ。
けど…俺は信じる。
紫には…紫だから、聴こえたんだろう。
流星の最後の言葉が……
――――…
――――――……
紫龍の寝顔を見つめながら、柔らかく淋しく微笑み、紫は想い出の中に居た。
チビの誕生日は、流星の命日だ。
あの後紫は、流星の傍でいつまでも嘆いていられなかった。
すげぇ慌てている紫のおばさんから電話で呼び出された俺は、
泣いて流星に縋る紫を無理やり引き剥がし、車に押し込み病院に急いだ。


