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[side 青空]



初めまして、紫の弟、青空(ソラ)です。

初めましてって言うのは変かも知れないけど、俺サイドは初なので、一応。



今日は俺の悩みを聞いて貰いたい。



今年札幌の大学を卒業し、実家に戻って来た俺だけど、夜な夜な悩まされている事がある。



その原因は姉と義兄。



俺の部屋の隣が姉夫婦の寝室だから、夜の営みがハッキリ聴こえ、正直参ってる。



姉の喘ぎ声なんて、弟にとって、苦痛以外の何物でもない。



最初はヘッドホンして音楽聴いたりしながらやり過ごしてたけど…

何で俺が我慢しなきゃならない…って話しだよな。



これがずっと続くのかと思うと、うんざりしてきた。



それで意を決し、今日は義兄さんに…

ああ、流星の事は、今は“義兄さん”と呼んでいる。



理由は「流星」と呼び捨てにして、姉ちゃんに殴られたから。



呼び方なんてどうでもいいけど、とにかく義兄さんに直談判しに行った。



ノックをしてからドアを開ける。




「義兄さん、相談って言うか、話しがあんだけど今いい?」



「ん?青空君が俺に相談なんて珍しいね。
どうした?」





義兄さんが書斎として使っている2階の端の部屋は、外国語の本で溢れている。



その部屋の中央に置いた木製デスクで、義兄さんは今日もキーボードを叩き続けていた。



義兄さんも勿論ファーム月岡の一員として働いているけど、小説家としての顔も持ち合わせている。



夏の観光シーズンには、この書斎は余り活用されないが、冬はこの部屋で過ごす時間が多い。



雑誌の連載とかしてる訳じゃないから、書きたい時に書いて、店が忙しい時は書かない。



それで結構稼いでいるみたいだし、自由な商売でいいよな。



そう言えば、義兄さんが婿入りしてすぐに、こんなことがあった…





―――――…


とある秋の日の夕食後の気ままな時間、

義兄さん宛てに掛かってきた家電を、俺が取った。