この後、ファーム月岡の店内で、食事が出来るそうだけど…
あれだよ?
レストランのコース料理じゃなく、ママさんの手作り料理で、和気あいあいと。
雰囲気としては披露宴じゃなく、農業組合の飲み会みたいになるんじゃないかな?
準備にママさんは店に戻り、式場にやっと顔を出した大樹が、紫ちゃんと会話する間もなく、
「手伝え」と連れて行かれた。
結婚式の終わったこの場は、記念写真撮影会になり、賑やかだった。
友人達が新郎新婦と写真を撮る中に、なぜか観光客も混ざり、写真の順番を待っている。
目をハートにした女性客にせがまれ、営業スマイルで一緒に写真に写る大ちゃん。
腕まで組んであげちゃって、サービスしすぎじゃないの?
紫ちゃんが嫉妬する…
と思ったけど、心配無用だった。
目を合わせた2人は頷き合い、何かを企んでいた。
紫ちゃんが、写真をねだった女性客に近づいて行く。
ウエディングドレスのどこに隠してあったのか、チラシの束を取り出し、
そのお客さんや、周囲の観光客に配り始めた。
「青空の下、ラベンダー畑のウエディング。あなたもいかがですか?
ファーム月岡は、アットホームなウエディングを始めました!
ご結婚される際には、是非うちの店で!
近くのオシャレなレストランとも提携してますので、式の後はそちらで優雅な披露宴を……」
紫ちゃん……
自分達の結婚式を機に、ブライダル商売にも手を出す気なんだ…
やっぱり彼女は商人だよね。
自分の結婚式すら、商売に結び付けてしまう心意気。
呆れて、何も言えないよ…
やれやれ…と首を振りながら、2人から離れ、たく丸君の側へ行った。
たく丸君は木陰で、式を撮影したビデオカメラを確認している最中だった。
「たく丸君、僕にもビデオ見せてー。
あの長過ぎるキスも写したのー?」
「写したよ。あれもいい記念だから。
まだ瑞希に、お祝いコメント貰って無かったな。
カメラ回すから、何か一言喋って?」
たく丸君は、このDVDを2人にプレゼントするみたいで、招待客のお祝いコメントを集めていた。


