その姿を見ていると、
鼓動が徐々にスピードを上げて行った。
いつもは煩くて面倒臭い女子が、
今はしおらしく、少しだけ色っぽい…
動悸と顔の熱さに焦り始めた。
「あ、あのさ、本当気にしないで。
横山さんが掘に落ちる前に助けてあげられなくて、俺の方こそごめんな」
「紫龍君のせいじゃないよ!私が…無理にテディベアを追い掛けたから…
紫龍君が選んでくれたから…どうしても諦めたくなくて…
でも…ピンクのテディベア…結局どこかに行っちゃった…」
ヤバイ… どうしていいのか分からない…
クマのぬいぐるみ一つで、泣きそうな顔する女子に、何を言ってあげたらいいのか…
語彙は豊富だと自負しているが、こんな場合に相応しい言葉は、何も浮かんでこなかった。
その時、廊下の奥が騒がしくなった。
バスで到着したみんなが、ワイワイ賑やかにやって来る。
それに気付いた横山さんが、急いでポケットから何かを取り出し、俺に押し付けてきた。
受け取った物は、手の平サイズの茶色い紙袋。
中に柔らかい何かが入っている。
「これ何?」
「えっと…助けてくれたお礼…
紫龍君が喜びそうなものが分からなくて…
でも、男の子ならこういうのがいいかなって…
あ、恥ずかしいから、後で見てね。
それじゃ、私、戻るね。
本当にありがとう!」


