なぜか…ではないか。
両手に花状態の中坊の俺は、きっとムカつく存在なのだろう。
トラブルにならないよう目線を逸らし、彼らと擦れ違う。
その時…
男一人が、わざと横山さんにぶつかって来た。
彼女は「キャア!」と声を上げ、転びそうになる。
咄嗟に腰に腕を回し、支えてあげたが…
横山さんは無事でも、ピンクのテディベアが彼女の腕から転げ落ち、
橋の欄干の下を潜り、水掘に落ちそうな状況だ。
彼女は体勢を立て直すと、慌ててテディベアを追い掛ける。
「危ないっ!止めろっ!」
俺の忠告を無視して、欄干から身を乗り出し、
彼女はテディベアを捕まえた。
そしてそのまま、
ぬいぐるみと一緒に水掘に落ちてしまった。
掘の水深は4〜5メートルだと、パンフレットに書いてあった。
かなり深い、足は付かない。
急いで欄干に駆け寄ると、パニックになる彼女は明らかに溺れかけていた。
ヤバイ…
もう一人の女子佐藤さんに、公園管理者を呼んでこいと伝え、辺りを見回す。
橋の上には、観光客がかなりいた。
みんな慌てて、どうしようどうしようと言うだけだ。
一人の見知らぬ女性が、
飲み干す寸前の500mlペットボトルを持っているのに気づいた。
「すみません!ペットボトル貰います!」
そう言って、奪うようにペットボトルを掴み、
荷物を捨て、水掘の中に飛び込んだ。


