ラベンダーと星空の約束+α

 


紫ちゃんが、指輪はこれ以外はめないと言い張るから、大ちゃんの分だけ新しい指輪を買ったらしいよ。


そうしないと、指輪交換出来ないもんね。



大ちゃんの分は昨日見せて貰ったけど、お揃いに見える様に、色は金で、小さな紫水晶がリングの内側に埋め込まれていた。



2人らしくていいチョイスだね。

でも僕は、自分の時にはダイヤの付いた、もっと豪華な指輪がいいな。

僕の美しさに負けない様な指輪をね。





亀さんの上手な司会で式はスムーズに進み、その後は、大樹が一番見たくない誓いのキス。




入場の時より一際大きな歓声が沸く。




綺麗な背景と優しい香りの中、親しい仲間と見知らぬ大勢の観光客に見守られながら、2人はキスをした。



綺麗すぎて、冷やかしの言葉なんて出てこない。



騒がしかった歓声も止み、周囲からは、うっとりした溜息しか聞こえなかった。




2人共、本当に綺麗だなー…



澄み渡る青空…
木漏れ日の柔らかい光り…


紫色にさざめくラベンダー畑と…
優しい香りを運ぶ、そよ風……



まるで映画のワンシーンみたいだ。



2人の美しさは、僕のヘアメイク技術力の賜物(タマモノ)ではあるけどね。





誰もが見惚れる2人のキスは、チュッて、軽く終わらなかった。




5秒…10秒…

まだしてるよ……




15秒…

あっ、なんか濃くなってきた……




溜息混じりに見ていた周りの人達が、ザワザワし始めた。



長過ぎる。

そういう濃いキスは、2人切りの時にやんなよ。

僕は、紫ちゃんのグロスが取れるのが心配だ。




司会の亀さんが

「俺が止めないと、終わらないのか…?」

と言いたげに、戸惑いがちにマイクを口元に持って行く。



しかし亀さんが止める前に、長いキスは20秒経って、紫ちゃんの怒り声と共にやっと終了した。




大ちゃんの胸を、両手で押して、突き放した紫ちゃん。




「流星!長過ぎる!

軽くって約束してたでしょ?

何やってんのよ、もうっ!」




誓いのキスの後に、新婦に怒られる新郎って…初めて見た。



2人が富良野で一緒に暮らし始めて1年。

夫婦の力関係が、出来上がりつつあるよね…

大ちゃんが完全に彼女の尻に敷かれるのも、時間の問題だね。




 ◇


アットホームでコメディーっぽい結婚式は、あっという間に終わった。