最後は留美と一騎打ち。
一つの椅子の周りを二人で歩く。
「なぁ留美、小学生の時は嫌って程撮ってるよな?母さんのカメラ趣味に付き合って。
別に今更写真なんてどーでもいいだろ」
「良くない!
確かに紫龍君のお母さんにいっぱい写してもらったけど、ラブラブじゃないもん。
お弁当食べてる所とか、大玉転がしてる所とか、そんなのばっかり」
「カメラ持って学校行くとなったら行事物、それは仕方ないだろ。
分かった。だったら今度うちで二人の写真を撮ろう。それで勝ちを譲ってくれ」
「イヤ。どう考えても皆の前でラブラブツーショットの方がお得だもん。
私が1番紫龍君と仲良しだよって見せ付けるの」
「………」
何を言っても留美は勝利を諦めてくれない。
陸上部女子に使った手は、留美には使いたくなかった。
留美にもそれなりに効果はあると思うが、俺の心が拒否している。
拒否の理由はきっとアレ。
小学五年生の秋、田圃の畦道で血迷って留美にキスしようとした結果、
頬に張り手を食らい突き飛ばされた。
更にはキス未遂現場をお喋りな稲田のおばさんに目撃され…
母さんに叱られ、父さんに的外れな注意をもらい散々な目にあったのだ。
言うなればアレのトラウマ。
留美に色仕掛け的な事は二度としたくない。
「頼むって、勝ちを譲ってくれ」
「イ・ヤ」
「お前の頼み、一個だけ聞くから」
「本当?じゃあ婚約して?」
「それは…無理」
「ふーん…
もう、絶対絶対絶ー対っ勝つからね!」


