最後の三人、俺達と留美と陸上部女子。
ここからは母性本能に訴える作戦は通じないだろう。
陸上部女子について、以前こんな話しを聞いた。
三年生が引退して現二年のこの子がキャプテンになったのだが、
彼女がキャプテンになると同時に急に練習が厳しくなったと。
練習メニューについて彼女が「もっとキツイものを」とコーチに頼んだらしい。
彼女は自分に厳しく他人にも厳しい人。
部員達は毎日ヒーヒー言わされているらしい。
しかも、余りの厳しさに泣き出した一年生を見下ろし、嬉しそうに笑っていたとか…
大地を嘘泣きさせても、この子には通じないだろう。
泣いても心配してくれず楽しそうな目で見てくる人間がいるなんて、小さな大地に学習させるのは酷だな…
留美に関しても泣き真似は通じない。
その理由は大地を良く知っているからだ。
たまに遊びに来て妹達と遊ぶついでに大地を構っている。
さっき他の子に聞こえない様に小声で、
「狡いけど、ライバル減るから見逃してあげるね」
と言われたし、本気で泣いていない事はとっくにバレている…
さて、この二人をどうするか……
再び流れ出したクリスマスソング。
二つの椅子の周りを歩き始めた。
留美は置いといて、まずは陸上部女子の方に仕掛けた。
前を歩く彼女は、肩までのポニーテールの髪を揺らす。
その髪を一撫でし、髪から手を離す瞬間に指先をサッとうなじに滑らせた。
「きゃっ!…え?紫龍君?」
瞬時に耳まで真っ赤になる彼女を見て、「いけるな…」とほくそ笑む。
音楽に乗って歩きながら、前を歩く彼女の耳元に口を寄せた。


