ラベンダーと星空の約束+α

 


手作り感溢れた、人前式の結婚式。

愛を誓うのは、神様じゃなく、列席者の人達に。



列席者の中には、僕の知っている顔もチラホラいる。


その人達の説明は後にするとして…大半は、富良野の地元の農家の人達かな。



そう言えば招待状に

『簡単な式なので、気軽にお越し下さい。普段着で構いません。』

と書いてあった。



近所の農家さんは、この季節忙しいから、ラフな結婚式を選んだのかもね。



でも中でも一番忙しいのは、やっぱりファーム月岡の人達。



娘の結婚式なのにパパさんは作業着だし、

ママさんは一応ワンピースとか来てるけど、店のロゴ入りエプロンを付けたままだし…



弟の青空君は式場を覗きつつ、店舗とラベンダー畑を行ったり来たりして働き、大樹もそれを手伝っている。



あ…そうだ、大樹……



乾杯が終わり、僕の知らない農家のおじさんが、カチンコチンに緊張しながら祝辞を述べている間、

その場をさりげなく抜け出し、ファーム月岡の店舗に入ってみた。



少し気になる事が…




店内は中々の盛況ぶりで、アルバイトの人達数人が、土産物の販売を続けていた。



軽食の方は、紫ちゃんとママさんが居ないと営業出来ないから閉めてあるけど、

ソフトクリームや飲み物は販売していて、

普段着にエプロン姿の大樹が、お客さんにラベンダーソフトクリームを手渡していた。




僕は大樹に近づいて行った。




「働くねー」




「あ?何だ、オカマか。
トイレか?」




「トイレじゃないよ。

おじさんの祝辞が長そうだから、抜けて来た。

ねぇ大樹、何で結婚式出ないの?」




「店に人手がいるだろ…」




「アルバイトの人達と、青空君がいるから、大丈夫じゃない?

君まで働く必要ないと思うけどね」




「別に手伝ったっていいだろ、放っとけ…」




「ふーん…」




「何だよ、その目は…」




「やっぱり、紫ちゃんの結婚式を見るのは辛いのかぁ」




「…今更…そんなん思わねぇよ…」