過去にも同じ内容で大樹のおバカ振りを笑った気がするが、それはいつだったかと考えていた。
大樹は小指で耳をほじりながら、なぜ「耳くそ」ではいけないのかと、不満顔だ。
そんな私達…両親を目の前にして、紫龍は溜息混じりに呟く。
「やっぱ夢はただの夢か……
まともに話しを出来る雰囲気じゃないな……」
残念そうな顔して背を向け、自分の部屋に戻ろうとしている紫龍。
慌ててその背中を引き止めた。
「待って! 紫龍…今、夢って言った?
もしかして…紫龍の夢にも、流星が出て来たの?」
「…… うん、そう。
詳しい夢の内容は、起きて暫くしたら忘れちゃったけど…
確かここに来て、自分の気持ちを正直に伝えろって言われた気がする」
「や…やっぱり!!
大樹聞いて!凄いよ!
流星は私の夢の中で相談に乗りながら、紫龍の夢で解決に乗り出してくれたんだよ!!
同時進行?流星すごいね!」
大樹の肩を強く揺さ振り興奮気味にまくし立てると、
嫌そうな顔の大樹に、片手で頬を挟まれブニッと潰された。
「くだらねぇ…夢は夢だ。
流星は死んでんだぞ?
相談も解決もクソもねぇだろ。
現実と夢をごっちゃにしてんな。
紫だけなら分かるが、紫龍まで朝っぱらから何だよ…お前ら変だぞ…?
あ…おい、大地が起きた。
夢か妄想かしんねぇが、くだらねぇ話しは終いだ。
下行くぞ」
私の隣の子供布団では、起きたばかりの大地がブリッジしながら
「アハハハ」と笑って楽しそうだった。
大樹は大地をひょいと肩に担ぎ上げ、寝室を出て行こうとする。
ドアに背を持たれる紫龍の横を通り過ぎ、廊下に一歩足を踏み出した所で、大樹はピタリと足を止めた。
肩越しに振り返り、紫龍を見るその顔には、驚きが……
「今、何つった…?」
「写真の父さんから、父さんへ伝言。
『二人三脚の練習は出来なかった』って」
「…マジかよ……」
二人三脚?練習?
私には意味が分からないけど、大樹には心当たりがあるらしい。


