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[夢で逢えたら…Side 紫]
気が付くと私はラベンダー畑の真ん中に佇んでいた。
静かな静かな夜。
今宵は何故か虫達も息を潜め、耳に聴こえるのは風にそよぐラベンダーの花穂が擦れ合う音だけ……
青く光るラベンダーの海はサワサワ…ザワザワ…とゆったりと波打ち、
紫色の波間に私は一人、天を仰いでいた……
南西の方角に見えるのは蠍の心臓アンタレス。
赤く瞬くその姿は…
脈打つ流星の心臓みたい……
アンタレスに向け、今日も話し掛ける。
流星…今日も一日、楽しく過ごしたよ…
子供達は元気に育ち、お店も順調。
大樹はいつも私の近くに居て、変わらない愛で包んでくれる。
幸せな日々。
大切な家族と笑い合える日々。
でもね、やっぱりあなたに逢えない淋しさは消えない。
その淋しさはこのラベンダーの海のように、波打ち、うねり…
時々大波にさらわれ、泣いてしまう時がある……
あ…大丈夫だよ。
心配しないで。
今は泣くのは悪い事じゃないって思ってる。
時には泣く事も必要なんだって…分かっているから。
流星は泣いてもいいとビデオレターに言葉を残してくれた。
泣いてもいい…
でも、泣く時は大樹の隣で泣いてって……
その言葉通り、無性に淋しくなった時は、大樹の腕の中で泣かせて貰っている。
大樹の大きな腕の中で、泣いて泣いて……
そうしたらね、気持ちがスッと楽になって、その後は自然な笑顔で笑っていられるの。
流星は私と大樹を結んでくれた。
泣いてもいいと言葉を残してくれた。
その優しい想いは…
今も私を助けてくれる……
「ありがとう…流星…」
そう呟いた時、アンタレスが一際強く瞬いた。
眩しくて思わず目をつむる。
それと同時に耳に懐かしい声が届いた…
「お礼を言いたいのは俺の方だよ。
紫…幸せでいてくれてありがとう。
君が今も幸せなのは俺の力じゃない、君の力だよ」
ハッとして目を開ける。
すると…目の前には流星が立っていた。
柔らかい茶色の髪を風に揺らし、色素の薄い綺麗な瞳はラベンダー畑を背景に、私の姿を映し出す。
右頬の笑窪を凹ませ、私の好きな優しい微笑みを見せてくれる。
「紫、逢いに来たよ。
君の夢の中に…」
流星は両腕を広げ「おいで」と誘う。
その腕の中に飛び込むと、強く抱きしめ、私の髪に顔を埋めた。


