ただそれだけの事。

写真の中の父さんは、相変わらず微笑みを絶やさない。



でも、俺にはその顔が、心配しているような…

不安に感じているような…
そんな表情に見えた。




「大丈夫だよ。心配しないで。

それが事実でも、父さんの死を『俺のせいで…』とは思わないから。

そんな事考えたら、父さん嫌だろ?だからゴメンなんて言わない。


ありがとう父さん。

守ってくれて…生を与えてくれてありがとう。


俺、生まれて来て良かった。

賑やか過ぎる家族に囲まれて、勘弁してって思う時もあるけど、毎日楽しいよ。

この家に生まれて良かった…」





茶色い髪の色も、目も口元も、笑窪の位置も…

自分と良く似た父親がそこにいる。



安心して貰おうと思い、写真の中のその顔と同じように、俺も笑顔を作って見せた。



すると再び太陽は顔を出し、机上は温かな光りに包まれる。



写真の父さんも、日だまりの中で穏やかに微笑んでいた。




この書斎は、俺達家族の心のより所。



大地が成長して自分の部屋が欲しいと言ったら、部屋数が足りなくなるが、

それでもこの書斎はずっとこのまま、変わらずあり続けるだろう。




必要な場所なんだ…

蠍座のアンタレスが見えない時でも、いつでも父さんと語らえる、

ここはそんな大切な場所……





【白紙に描かれた紫龍13歳夏の思い出−終−】




 ***

性懲りもなく、まだおまけストーリー続きます。

しつこい?ごめんなさ〜い!