階段の途中に俺を座らせ、隣に同じように座った父さんが、真顔で言う。




「紫龍、お前の歳で押し倒すのは、まだ早ぇぞ?

後数年は我慢しろ。

俺だって紫に手を出したのは、高一の夏だ。

男はな、我慢が出来なきゃなんねぇ」




父さんの説教は、少し論点がズレている。


年齢よりもまず、田圃の畦道で押し倒したと言う内容を叱った方がいいと思うが…

やってないけど。



それに、父さんと母さんの初めての話しなんて聞きたくない…あれ?

まてよ…



母さんは高校生の時、写真の父さんと付き合っていた筈。

それなのに、今の父さんとも、そう言う関係にあったのか?



母さん…

実は魔性の女だったのかな……




リビングでは、風呂から上がったばかりで事情の知らない祖父ちゃんが、キョロキョロしていた。



もうすぐ一歳になる大地をあやしている祖母ちゃんに

「紫は?」なんて聞いている。




煩い双子の妹達が待ってましたとばかりに、寄ってたかって祖父ちゃんに説明する。




「おじいちゃんあのね、お母さん謝りに行ったの。
お兄ちゃん怒られてた!」



「あのね、留美ちゃんにキスしたんだって!」



「キッスだよ?
お兄ちゃんエッチだねー!」



「エッチエッチー!」





はぁ…

何かもう、どうでもいいや……




留美も母さんも、妹達も稲田のおばさんも、

女って、年齢問わず面倒臭いな……




深い溜息の中感じる事は、俺ってこの先もずっと女で苦労しそう…

そんな憂鬱な予感だった。





【白紙に描かれた紫龍12歳秋の想い出−終−】





 ***

このままだと紫龍は、女嫌いになりそうですね…

思春期になると、流星から引き継いだ容姿に女の子達が寄って来て、ますます大変そう♪

紫龍、頑張れ!



おまけの小話まだ続きます。