ーーまだほとんど人がいない校舎。 冷たい空気が廊下に漂う。 指先の感覚がなくなるほどに冷えているのを感じながら、 私はひとつの足音を待った。 今日は2月14日。 言わずもがな、バレンタイン。 右手にチョコの入った紙袋を持って、 私は自分が指定したこの場所の壁に寄りかかる。 手が震えているのは、寒さなのか、緊張なのか。 きっとどっちもであって、 それがどっちなのかとかどうかを考える余裕は 今の私にはないみたい。