俺達は愛し合った二人で、なんの隔たりもなかった。その筈だったよね。
だけど、世界は残酷だった。
俺達じゃ到底太刀打ちできないような、壊せない壁が、運命が目の前に立ちはだかったから。
先生が消えてしまわないように、ずっと、ぎゅっと手を握ってたって。
先生の方からその手を解かれたら、もうどうしていいかわからないんだ。
「……仁斗、別れよう」
──だから、お願い。
俺の手を、離そうとしないで。
「……は?」
それはしとしとと雨の降る六月。
先生との交際は順調に続いていて、この日も普通にデートに誘われたんだと思っていた。


