先生は暫く無言だったけど、やがて呆れたように笑いながら、俺の背中をポンポン、と叩いた。
「なーに子供みたいな事言ってるのよ。最初から分かってたでしょ、私がすぐ居なくなることなんて」
「……俺はまだ子供だよ」
それに、居なくなることなんてすっかり忘れてた。
それくらい、ここにあんたが居る事実が当たり前になってたから。
「行くなよ」
「わがまま言わないの」
「じゃあ俺の恋人になってよ」
「……っ、またそうやって……!」
逃げようと体を捩らせた先生を、そうはさせまいと強く抱きしめる。
そうすると先生の匂いがより一層強くなって、このままキスの一つでもしてやろうかと思った。
だけどそんな事をすれば、今度こそ本当に取り返しが付かない事になりそうで。
それが怖かった俺は、ただ黙ったまま先生を抱きしめ続けた。


