ガラッ、と勢い良く開けた数学準備室。
そこで先生は、隠れるように泣いていた。
「わっ、やだ、ノックくらいしてよ~」
恥ずかしい所見られちゃった、と赤くなった目もとを擦る先生。
その手には、クラスの奴らが先生に手渡したらしい手紙やら贈り物やらが沢山あった。
俺は、ズカズカと先生の元まで歩き、全くの無抵抗だった先生をそのまま抱き寄せた。
「ちょっと、安西君……!」
「行くなよ!」
俺になんの返事もしないで。
俺の告白を、はぐらかしたまま消えるなんて許さない。
「……行くなよ……ずっとここに居ろよ」
明日からもうあんたがここには居ないだなんて、想像もつかない。
あんたの笑顔とか、怒った顔とか、真っ赤な顔とか。
もう見られないだなんて、嘘だ。


