そんな姫の言葉に、そう、と頷く。



「いいの?……あれ、いつも付けてたじゃない。お気に入りだったんでしょう?」

「お気に入りっていうか、俺の命みたいなものだった」

「えっ、なら、尚更──」

「いいんだよ」



困ったように眉を下げた姫の言葉を遮る。



そう、あれは俺の命だった。あれにすがらなければ、生きていけなかった。



だけど今は違う。



「もう、いいんだよ」



今は、姫が居るから。

姫が居るから、俺は生きていこうと思える。



「ね、姫……、俺さ……昔、すげー好きなひとが居たんだ」



姫にだけ、教えてあげる。


俺だけの、思い出を──……。