不思議そうにする姫に少し笑ってから、俺はポケットからピアスを取り出した。
手のひらで鈍く光る、藍色の石。
これには沢山の思いでと感情が詰まっていて、それでいて、俺の枷だった。
「……サヨナラ」
俺はそう小さく囁いてから、ピアスを握りしめそのまま、海へとぶん投げた。
ピアスはみるみる小さくなり、やがて見えなくなった。
僅かな喪失感と、そして安らぎに満たされる。
──解放されたんだ。
俺を縛り付けていた鎖から。
どうしようもない、呪縛から。
どうしてか、空の上で、あの女(ひと)が笑っていてくれてる気がした──……。
「仁斗?今、何を投げたの?」
「……ピアスだよ」
「ピアス?あ、いつもしてた藍色の?」