「姫、ちょっと俺に付き合ってよ」 学校から姫を連れ出し、バイクで走ること一時間。 バイクから降りた姫は、目の前に広がる地平線に釘付けになっていた。 「……海……?」 ポツリと姫が呟く。 そう。俺達が来たのは、近くにある海。──といっても砂場ではなく、絶壁の崖の下に、波が打ち寄せているだけだから入ることは出来ないけど。 「危ないからあんまり前行かないでね」 「あ、うん……」 姫が慌てたように後ろに下がり、そして俺を見上げた。 「……どうして、ここに?」 「うん。姫、ちょっと見ててね」