……波多野さんのやりたくない理由も、
結構不純な動機だと思う。
だけど波多野さんは、まっすぐに私を見
つめて、「でも」と言った。
「でも、もし推薦されて私が主役に決ま
ったら、嫌でもやり遂げる。責任放棄な
んて絶対にしない!」
責任放棄、と言われるのはあまり面白く
なかった。身勝手なのはそっちだろう、
と思った。
推薦するにしても、どうしてもやりたく
ない人は抜ける、とか、そう言う風にし
てくれたら良かった。
そしたらこんないざこざだって、無かっ
たに決まってる。
「ていうか、龍牙の姫だからって、甘え
てんじゃ無いでしょうね!」
「甘えてる……?」
「獅童先輩も、自分の姫だからって甘や
かすから、こんな勝手な子になるんだよ
!」
それは、違う。
「雅達の事を悪く言うのは許さない」
そう言うと、波多野さんの顔が一瞬ひき
つった。


