どういうことなのか訊きたかったけど、
その時の類の表情があまりにも黒くて、
私はそれ以上その話題に触れることが出
来なかった。
一応、枚田君との台本の読みあわせは一
通り終わっていたから良かったけど……
。
でもこんなんで、劇なんか成功するんだ
ろうかという不安もあった。
──そして、劇の本番。
場面はもうすぐ、キスシーンに入ろうと
していた。
私は目を閉じているから、舞台がどうな
っているのかは全然わからない。
まあ、キスシーンといってもフリだし、
私はただ目を閉じていれば良いのよね、
と思っていると。
「う、うそ……!」
「え、本物!?」
「めちゃくちゃカッコいいーっ!!」
不意に、観客の方から、黄色い歓声が上
がった。
……枚田君が登場したのかな。


