どうしても私に主役をやって欲しいのか
、尚も食い下がろうとする佐藤さん。
「私以外に適任の子なんて、沢山居るか
ら」
むしろ、佐藤さんがやればいいと思う。
佐藤さん、ふわふわしてて可愛いし、お
姫様役にピッタリだもの。
困ったように眉を八の字にさせる佐藤さ
んを一瞥してから、もうこれで話は終わ
り、というように、顔ごと視線を逸らし
た。
──しかし。
「ちょっと待ちなさいよ!」
ダンッ!という音と共に、誰かの手が机
の上に打ち付けられ、私はゆっくりとそ
ちらを見上げた。
そこには、威嚇するように私を睨む、一
人の女の子が立っていた。
確かこの子は、波多野蕾(はたのつぼみ
)さんだったかしら。
佐藤さんと仲が良くて、普段周りを気に
しない私でさえ、佐藤さんとよく一緒に
居るというイメージがある。
ふわふわした佐藤さんとはまた、真逆な
感じの子だ。


