誰も居ないのかな、と思って入ってみた
けど、違った。
少し開いた窓から吹く風に靡く黒い髪。
肌に影が出来るほど長い睫毛。
柔らかそうな唇。
そこに居たのは、無防備に眠る姫だった
。
「……無防備すぎじゃねーの?姫」
そう呟きながら、姫の傍に寄る。
すやすやと静かな寝息を立てる姫。
まだあどけなさの残る寝顔に、体の中心
が熱くなってくる。触りたい、衝動に駆
られる。
触りたい、なんて可笑しい。
触りたいから触れていいような存在じゃ
無いことも、わかってる。
なんで姫に触れたいのか、なんて、わか
らないけど。……わかりたくないけど。
そっと手を伸ばすと、その白く柔い頬に
指先が、沈んだ。
思った以上に柔らかい。温かい。


