揺らがないで、俺達を誘惑しないで。
ふと、ガラリと、類の表情が変わった。
「ねえ麗ちゃん、一つ訊きたいんだけど
さ」
両膝の上に両肘を乗せ、そのまま手を組
むと、そこに顎を乗せて、姫を見つめる
類。
姫が、「何?」と聞き返す。
「さっきの男──枚田君、だっけ?あの
男の子、どうして麗ちゃんのことを呼び
捨てにしてるの?」
「そうだよ。なに馴れ馴れしく、呼び捨
てさせてんだよ」
類に加勢するように、悠も訊く。どうや
ら相当、枚田が姫を呼び捨てにしてるの
が気に入らないらしい。
……まあ、確かに。
俺達の姫を、あんな風に気安く呼ばれる
のは気に入らないよねー。
すると姫も、どこか微妙な顔をする。
「私だって呼ばれたかったんじゃないわ
よ。それに最初は、断ったし……」


