「俺は」
雅の低く、落ち着いた声が落とされた瞬
間、シン、と辺りが静寂に包まれる。少
しの、ピリリとした、肌が痺れそうな緊
張を、残して。
雅の黒い瞳が、悠と類を捕らえる。
そして、艶やかに、不敵に、笑った。
「麗を誰にも、渡さない」
思わず、当たり前の事なのに、ホッとし
た。
これで雅が、悠と類が麗を狙っているの
を黙認なんてしたら、俺はどうすればい
いのかわからなくなるから。
きっと、箍(たが)が外れてしまうから
。──なんの箍かなんて、知りたくもな
いけど。
「……声で威嚇するのやめてよ雅」
少し青ざめながら笑う類。
目線を向けられていない俺でさえ、ひし
ひしと感じられた威圧感だ。それを一身
に受けた二人は、俺の比じゃないだろう
。
そして、どことなく居心地の悪い空気が
流れた時──。


