「知ってるよ、そんなの」
しれっとしたようにそう言う類。
「お、お前が知ってても、他の奴は知ら
ないだろ!!」
「雅だって気付いてるけど?ていうか、
そんなの明言して何がしたいの?馬鹿な
の?」
「類が言ったのに俺が言わなかったら、
出遅れたみたいで嫌なんだよ!」
目の前で繰り広げられる口論に唖然とす
る。
意味がわからない。
総長の女を好きになっちゃいました、な
んて公言するなんてどうかしてる。
総長は俺達暴走族で、"絶対的存在"。そ
うだろ?
その常識を、崩すなよ。──頼むから。
あの子に触れてはいけない、唯一のしっ
かりした壁を、壊すなよ。
その時、それまでずっと黙っていた雅が
、ゆっくりと口を開いた。


