何か言い返せよ。
可笑しいだろこの空気は。
いつもの類だったら「何いってんの仁斗
」と冷たい目線を向けてくるんじゃない
のかよ。
すると、類はその口元を妖しく歪めた。
「……そうだよ?」
……は?
春希もまったく想像していなかったのか
、あんぐりと口を開けて、呆けている。
雅はただ、その眉間に皺を刻むだけ。
悠は、苛立ちと悔しさと焦りの織り交ざ
ったかのような表情をしていて。
まるで、俺と春希だけが、知らなかった
みたいに。
いや、普段の俺ならすぐに気付く。俺も
、観察力はそれなりにある方だから。
いくら類が自分を隠すのが上手いとはい
え、毎日半分以上の時間を共にしてる仲
間だ。気付かない訳がない。


