……トイレに行きたいのかしら。
流石にそれは安直な考え方か、と思って
いると、佐藤さんが意を決したように顔
を上げた。
「あの……っ、う、麗ちゃんって呼んで
もいいかな……っ?」
「え?」
「その、ずっと仲良くなりたいと思って
て───」
──『私達、ずっと麗ちゃんと友達にな
りたいなあ、って思ってたんだ~』
──『麗ちゃん、可愛いし美人だし!』
途端、佐藤さんの言葉を引き金に溢れ出
した、忌々しい思い出を、全て再生され
てしまう前に、心の奥に押し込んだ。
そして、出来る限りの冷めた目で、佐藤
さんに告げる。
「そういう馴れ合い、嫌いなの」
そう告げたときの、佐藤さんの傷ついた
表情が忘れられない。
そんな顔、しないでよ。
本当に私と友達になりたいって思ってる
のかもしれないと、錯覚するから。


