麗ちゃんは男を虜にする甘くて危険な毒。
その気にさせるくせして、本人はまったくそんなつもりは無いんだから。
その鈍感さが、無邪気さが、どれだけ罪で、残酷なのかを分かっていない。
そして俺達は、それが罠だと知りながら、毒だと知りながら捕まってしまうんだろう。
「こんな早く迎に来てくれるとは思ってなかったわ」
「早く麗ちゃんに会いたかったからね」
待っててね。すぐ鞄持ってくるから、と踵を返そうとした麗ちゃんにそう言うと、麗ちゃんは少し頬を染めて、口をへの字に歪めた。
……何その顔。
「……何?その微妙な顔は」
「……だって。類ってたまに、歯の浮くような事言うわよね」
ああ、今の言葉を、お世辞だと思われたのか。
心外だな、本心なのに。
「本当の気持ちだけど」
「はいはい、わかったわかった」


