ほんとに、雅はわからないなあ……。
嫉妬なんか見せないくせに、麗ちゃんを見つめる瞳はいつも優しくて甘くて。
それに気付かない麗ちゃんもかなり鈍感だけど、自分がそんな柔らかい表情をしてるってこと、雅も気付いていないんだろう。
──雅は一体、いつ麗ちゃんと出会ったんだろう。
多分、高校に入ってからじゃないんだと思う。でも、麗ちゃんは雅のことを覚えてないみたいだし……。
「あ、類」
そんなことを考えながら歩いていると、麗ちゃんの教室に着いていたみたいで、前から麗ちゃんが歩いてくる。
長い黒髪を翻して歩いてくる麗ちゃんに、廊下にいた誰もが振り返った。
そして、その美しさに皆囚われる。虜になる。
──もちろん、俺も。


