そう言おうとした唇は、一瞬のうちに塞がれた。
え?と思った時にはもう、一瞬息苦しかった呼吸もまた元に戻っていて。
「みや、び……?」
「──お前が、悪い」
雅は少し怒ったようにそう呟くと、今度はゆっくりと、先程と同じ工程で私の唇を塞いだ。
彼自身の、それで。
「ん……っ!」
柔らかい感触に侵されていく。
顔からは想像もつかないような、優しい、優しいキス。
でも逃げようともがく私の腕を掴む手は力強い。
逃がさない。──まるで、そう言ってるみたいだった。
目の前で伏せられた睫毛の綺麗さに目を奪われる。男の癖に、透き通るみたいに白い肌にも。
たまに触れる髪の毛も、サラサラしてるし。
なんか、いい匂いするし。
ダメ。クラクラして何も考えられない、って思った所でお互いの唇が離れた。
ほんの数秒の出来事だったのに、とても長いような錯覚。