そんな私の表情に気が付いたのか、きゅ、と眉根を寄せる仁斗。
「……姫、俺が目の前にいること忘れかけてたでしょ」
「あはは……」
忘れてました、とは言えず笑って誤魔化すと、気に食わない、と零す仁斗。
それから、拗ねたような目で雅を見上げた。
「ていうか、今日の登下校担当は俺なんですけど?」
貴重な姫との時間奪われたくないんだけど、と唇を尖らせる仁斗。
なにその仕草、子供みたい……。
そう考えたら少し可笑しくなって、小さく笑った。仁斗は気付かなかったみたいだけど。
「だから頼んでる。今日は麗と帰る」
「それ頼んでるって言わないからね雅サン?」
はー、とため息をつきながらやれやれと首を振る仁斗。
それから仁斗は、やっぱり拗ねたままの顔で雅を睨んだ。
「……狡いよねぇ、俺達が雅に逆らえるわけないって知ってて言ってるんだから。それに、こうと決めた時の雅は頑固だからね……」
そんな仁斗の言葉に、「ほんとにね」と苦笑いする類。
雅に頑固って言葉、なんかあんまり似合わないけど……。
「仁斗」
「あーもう、わかったわかった。今日は雅に譲るって。その代わり、今度一緒に帰るときはデートしようね姫」
ぱちん、と私に向かってウインクしてきた仁斗。
……日常会話の中でウインクなんか使う人、初めて見たわ。


