恐る恐るそう尋ねると、にっこりと無言で微笑む仁斗。
なんで無言なのよ!余計怖いし!!
「……姫は知らなくてい──」
「文化祭前、資料室で麗ちゃんが寝てるのをいい事にキスしたんだよ、仁斗」
「おい!切り札は最後まで取っておくんじゃなかったのかよ!?」
珍しく慌てる仁斗に、面白いからいいじゃん。もう切り札としての効能なくなっちゃったし。とのほほんと笑う類。
……ていうか。
「勝手になんてことしてくれてんのよ……」
「あはは、つい魔が差してね〜……って、それだけ?」
「え?」
きょとんとした仁斗に首を傾げる。
それだけ?って、何が?
「俺、姫にキスたんだよ?」
「今聞いたわよ」
「ほっぺとかじゃなくて、唇にだよ?」
「……うん?」
だから、知ってるよ?と言えば、はぁぁ、と仁斗が脱力した。


