そして俺の願いも虚しく──先生は死んだ。
先生の葬式に一生徒として参加した俺は、周りが啜り泣く中で、一粒の涙さえ流さなかった。
ただ自分だけ、どこか現実にいないような。──そんな浮遊感を味わっていた。
多分あの時はまだ、先生が死んだ事実を実感していなくて。
先生のお墓の前に立った時、先生が死んだ事実を漸く実感して、俺はその場に泣き崩れた。
「先生……っ」
行くなよ。
俺一人置いて、行くなよ馬鹿。
お願いだから帰ってきて。そして俺も一緒に連れてけよ。
何度も何度も願って、声が枯れるまで泣いて。
後にも先にも、あそこまで泣いたのはこれが最初で最後だと思う。
それから俺は、高校に入学して、適当に女の子と遊んで。──でも本命の子なんて作らなくて。できるハズもなくて。
だけどある日。
「──姫が、現れちゃったんだよねえ」


