「結城君!」 可憐な声が呼ぶ名前に心臓が一瞬跳ねる。 あらら、うじ君たら。 女の子からこんなふうに親しげに名前を呼ばれたりするのか……。 そんなことを考えている間に、教室内からうじ君がふらりと出てきた。 非日常的な感じに顔を腫らしているにもかかわらず景色に溶け込めるなんて、やっぱりただ者じゃない。 その彼の唇が、わたしを見た途端、小さく歪む。