「その傷――」 「転んで、椅子にぶつけたんだ」 わたしの言葉を遮るように答えると、 うじ君は目を合わせることもせずに背中を向けた。 「転んでって……」 椅子にぶつけたくらいでそんなボッコボコになるはずないじゃないか。 歩き去ろうとする彼のブレザーを咄嗟に掴む。 「もしかして、誰かに」 言いかけたとき、掴んだ手を思い切り振り払われた。