何気なく言われたその言葉が引っ掛かって立ち止まる。

言うだけ言って遠ざかっていく情報提供者を追いかけ、ブレザーの裾を掴んだ。



「ねぇ、大変て?」
 


いつになく反応しているわたしに、男子生徒は少し驚いたように眉を上げる。



「ん? なんか傷だらけっつーか? 顔中ボッコボコで」

「ボッコボコ?」
 


なんだ、それ。



「どこに居た?」
 


意気込んで問うと、男子生徒は圧倒されたように口をぱくぱく開けながら廊下の向こうを指差した。