スケッチブックと向き合っているときの真剣な表情と、

描き終えたときの柔らかな表情。



それを見るだけで、彼がどんなに放課後の時間を大事にしているか、手に取るように分かる。
 


それなのに、絵が嫌いだなんて。





「志摩、あんたデッサンどうすんのよ」
 



黒板の前に陣取っているアキちゃんが、手を動かしながら面倒そうに呟く。


まるでそう口にするのが習慣になってるみたいだ。



「やるよ、もうすぐ」
 


デッサンの対象物は、もう決まっているのだから。