「違うわよ。本名は忘れちゃったけど、ユウレイはあだ名。普通科に目立たなすぎて幽霊みたいって言われてる男子がいるって聞いたことがあるから」
「へえ」
確かに前方を行く男子生徒はとてつもなく目立たない。
オペラグラスで見た限り、
肌は白く、髪は真っ黒でセットしてる様子もなく自然体だし、一重瞼で唇は薄い。
鼻筋は通っているけれど、高いということもなく、だんご鼻でもないせいで逆に特徴がない。
身長は平均、体格はやや細身。
オーラをまとっているわけでもないし、
確かに『幽霊』と言われたら、一瞬そうかも、と思ってしまうほど周囲の空気に溶け込んでいる。
「存在感なしってやつ? なんであんなのがいいんだよ志摩」
「そうよ。あんなのよりも王子の方が断然モデルにふさわしいわよ」
背後からごちゃごちゃと声を掛けてくる2人に向き直る。
まったくこいつらは何にも分かっちゃいない。


