視界の片隅、 椅子と椅子の隙間を歩く姿が目に留まる。 わたしは慌てて胸元のオペラグラスをかざした。 丸く縁取られた視界の中で、 一人の男子生徒が椅子に引っ掛かってお茶をこぼしそうになっている。 「い、い、い……」 「なんだよ志摩、急に立ち上がって」 正面で怪訝な顔をする友人2人を押しのけるようにして身を乗り出す。 「ちょ、志摩、制服にカレーがついちゃ――」 「いた――――っ!!」 わたしの叫びは、食堂内の時を一瞬止めてしまうくらい高々と響き渡ったという。