「うぐふ……蕎麦に罪はない」 信号機の呻きに共感して頷いていると、 アキちゃんに睨まれていることに気付き、わたしは慌てて口を開いた。 「だ、だって、あの王子のフォルムはわたしの心に響かなかったんだもん」 デッサンのモチーフは好きに決めていいはずだ。 わたしとしては、この心を打ち抜くような素敵な対象物しか描きたくない。 「そんなこと言ってると、提出期限に間に合わないわよ」 「うーん」 だってなぁ……と思いながら、ざわざわと騒がしい食堂内を何気なく見やる。 そのときだった。